知ってるようで知らない伝統工芸品と民芸品の違い!

民芸品の熊の画像伝統工芸品・民芸品

観光地にある土産店に足を運べば、工芸品や民芸品が店頭の棚を賑わせているます。
言葉も語感も似ている二つの言葉ですが、一体伝統工芸品と民芸品の大きな違いとは何なのでしょうか。

民芸品と工芸品の違い

結論から言うと大枠での意味は基本的には同じです。通底するものは地域の文化風土から誕生した日用使いの手工業製品であるということです。
伝統工芸品の場合、伝統技術や技法、素材を用いることがその名の根本にある。そのため資格保有者の技術や作り手の名前を前面に出したものが多く、美術品など高付加価値な品を作成することも多い。また一方で伝統技術を使う事がその定義の要件となるため、他の地域や海外でその工芸品の名を冠したものを大量生産したものもその範疇に含まれます。

民芸品とは?

民芸品の正式名称は民衆的工芸品であり、地域に根差した民衆の暮らしの中で誕生した手製の日用品のため、生産地域と製品を切り離すことができません。また、名もなき作者が担うことが多いです。地域住民の多くが作れるものもありますし、製造方法が地域全般で代々受け継がれているケースも珍しくありません。そのため高付加価値品に至るものは工芸品と比較した場合少ないです(場合によっては存在します)。
いずれも歴史的風土が育んできたものであるというのには変わりがありません。

民芸品(みんげいひん)とは、民衆生活の中から生まれ、日常的に使われる地域独特の手工芸品のこと。元は「民衆的工芸品」の略で、1925年柳宗悦を中心とし、陶芸家の河井寬次郎、濱田庄司らによって提唱された造語。

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%B0%91%E8%8A%B8%E5%93%81

伝統工芸品とは?

一方、伝統工芸品とは民芸品よりも格上として扱われるのが通常です。伝統的な技法や原料を用いて制作することが根幹となっています。作り手が有名であることが普通で、名前を品名とセットで提示しているケースも珍しくありません。むしろ希少な作り手の名声によって価値が高まっているとも考えられます。民芸品や工芸品と違って日用品というよりは、美術品として扱われることも多いです。製法や材料が確立していることも目安となるでしょう。伝統工芸品の中でも、建材産業大臣が定めた200あまりの種類は伝統的工芸品に分類されています。該当するには法律で規定している要件を満たさなければなりません。ですから、お墨付きのある価値の高いものとして高値で取り引きされたり、博物館に寄贈されたりするケースもよくあります。伝統という文字が付いていますが、実際には時代ごとの産業に適合するように改良も加えられてきました。

一般の「伝統工芸」などの呼び方とは別に、「伝統的工芸品」という呼称は、「伝統的工芸品産業の振興に関する法律(伝産法)」で定められました。「的」とは、「工芸品の特長となっている原材料や技術・技法の主要な部分が今日まで継承されていて、さらに、その持ち味を維持しながらも、産業環境に適するように改良を加えたり、時代の需要に即した製品作りがされている工芸品」というほどの意味です。

https://kyokai.kougeihin.jp/traditional-crafts/

伝統工芸品と民芸品の区分けの実際

世俗的には、伝統的な技法を用いて作っただけで伝統工芸品と見なす場合もあります。こちらに関しては、必ずしも地域と密着しているわけではありません。ただし、これは法律の定義によるものではなく、訴求力を高めるために店側が一方的に決めているケースがほとんどです。たとえ海外で大量に生産したとしても、伝統的な技法さえ用いていれば、伝統工芸品として扱おうとする人もいるのです。これに対しては認識の正否を疑問視する人も少なくありません。 このようにカテゴライズに関しては、線引きのレベル次第では曖昧な部分が残ってしまいます。しかし、どちらにせよ歴史の流れの中で育まれてきた技術や想いが関係していることは確かです。現代の工業製品以上に使用者との調和を大切にしつつ、機能性も追求する形で発展してきました。そのため、時代を超えて現代まで素晴らしさが伝えられてきたのです。

日本を代表する民芸品の例

日本全国では地域の暮らしの中で必要に応じて発展して誕生した製品というものが多数あります。一般的に暮らしの中で生まれた比較的安価なものは民芸品と呼ばれております。そんな民芸品の一つに沖縄やむちんと言われているものがあります。

沖縄やちむん

もともと沖縄の方言で焼き物のことを示していて、年に数回開かれるやちむんの陶器市を目指して、その為に沖縄まで旅行に来るという方達までいます。この焼き物の特徴は、絵付けにあって沖縄の海をイメージさせるようなコバルトブルーや南国の植物など感じさせる緑にそれぞれと対になる茶色を使っている場合が多く、デザインは様々ですが、器としてぽってりとあつみにあるものが多いので、大皿料理などが合うようになっています。

小石原焼

次に福岡県の小石原焼という焼き物があります。元々の始まりは、今から約340年ほど前に磁器の生産が盛んであった佐賀県の伊万里焼にならい、作られるようになったのが起源とされています。この小石原と言う場所は、内陸に位置していて山々に囲まれている自然豊かな土地で、農業も盛んに行われていました。水田がだんだんになっている棚田などもあり、陶器にも適した土だったので焼き物も作られ続けてきました。昔は大型の壺や皿など多く作っていたのですが、現在では生活に必要な器がほとんどです。この焼き物は飛びかんなという技法を使った模様のあるものや、刷毛目という化粧土をかけてすぐろくろを回転させながら刷毛を当てて模様つけるものなど、独特の模様もあります。それぞれの模様に味があるので、好んで使用している愛好家も多数います。

小鹿田焼

この小石原焼の独自の技法が伝わって始まったのが大分県の小鹿田焼で、江戸時代の中期ごろに小石原焼の陶工がきたことによって始まったのだと言われています。ほとんど小石原の技法が伝えられているので、同じ技法の作品なので見分けがつきにくいかもしれませんが、双方とも温かみのあるデザインで、手持ちの食器とも合わせやすくなっていて、色んなものに盛り付けるのにも適していています。このような全国代表する民芸品の中で、陶器の作品というのはその土地の土を使用されているので温かみを感じることと共に、旅行に行った気分を味わう事が器を使うだけで出来ると言う点でも良いと感じられます。デザインに関してはそれぞれの好みもあるので、自分好みのデザインのものなど探すだけでも、楽しい気分になることは間違いありません。

全国を代表する伝統工芸品

伝統工芸品とは「伝統工芸品産業の振興に関する法律」に基づいて経済産業大臣の指定を受けた工芸品のことを指しています。日常的に使用されおり、手作業が中心で製造されている上、100年以上の歴史ある伝統的な技術・技法により製造されているもの等細かな要件があり、現在1200品種近く指定された工芸品があると言われています。有名なものとしては有田焼、伊万里焼、九谷焼、江戸硝子、箱根寄木細工などが挙げられます。どれも一度は耳にしたことがあるのではないでしょうか。ここではこの中から全国を代表する有田焼、伊万里焼、九谷焼について紹介します。

有田焼

まず、有田焼についてです。この焼き物は佐賀県有田町を中心に焼かれる磁器のことを言います。17世紀初頭、挑戦人陶工によって、泉山で陶石が発見されたことがきっかけで初めて日本で磁器が焼かれました。ただ、当時はその積み出しが伊万里港からなされていたため、伊万里焼とも言われていました。この二つが区別されるようになったのは明治以降のことで、輸送手段が船から鉄道等の陸上輸送に変わるにつれて、有田地区の製品を有田焼、伊万里地区の製品を伊万里焼と区別するようになりました。その雅で煌びやかな美しさからプレゼントとしても人気が高く、お祝いにも最適な品です。

伊万里焼

このような背景で生まれた伊万里焼ですが、有田焼に比べてヨーロッパでの人気が高く、オールドイマリという名称で愛されています。1690年代には染付の表地に赤や金などを多用した絵付けを施した製品が作られるようになり、この手の製品がヨーロッパ向けの輸出品となったことが大きなきっかけと言われています。なお、よく聞かれる古伊万里との大きな違いは、作品そのものの骨董的価値の有無にあります。江戸時代に焼成された歴史的、骨董的価値のあるものを古伊万里と呼んでおり、明治以降に焼成されたものが伊万里焼と呼ばれています。世界中に熱烈なコレクターが存在するだけあり、その美しさは誰もが認める焼き物となっています。

九谷焼

最後に九谷焼ですが、そのルーツは石川県の小さな村で生まれすでに360年余りの歴史を持っています。大きな特徴としては伝統的に受け継がれてきた技術をしっかりと守りながらも新しい挑戦を続けていくことで柔軟性のある時代に合わせた製品を作り続けているにも関わらず、美術品としての価値を持っていることです。そのしっとりとした控えめな美しさに魅了される人がたくさんいます。

まとめ

暮らしとの調和、使い手に立った用の美、機能美を追及するのが民芸の根本にあります。民芸という用語を作った主役格は柳宗悦。資本主義が台頭し、安価な大量生産品が世を跋扈しつつある中、本当の豊かさを追及する上でこの概念に辿りつきました。伝統工芸品、民芸、美術品、様々な用語上の微々たる差異はありますが、根本にあるのは、時代を超えて受け継がれる本質的なものづくりの価値です。そこを追い求めるのに言語上の定義の壁は、現代において特にないように思われます。

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