欧州の名窯ヘレンドってどんなメーカー?

世界の工芸品

 欧州の名窯の一つにヘレンドと呼ばれるものがあります。その歴史は1826年にナポレオン戦争が終結をむかえて、世の中に平和が戻ったころにさかのぼります。ヘレンドは村の名前であり、ハンガリーの首都であるブダペストから120キロほど離れた場所にあります。この村に小さな窯が開かれたのが始まりです。当時のハンガリーにはウィーン窯と呼ばれるものがすでに存在していましたが、その中でもハンガリー産業博覧会で注目を集めるようになり、少しずつ名前を世に知らしめていったのです。

ハプスブルク家とヘレンド

 当時ハンガリーを統治していたオーストラリアのハプスブルク帝国の皇帝がヘレンドを好んだのは非常に有名なことであり、現在でもゆかりの品々が数多く保存されています。 ヘレンドの名前が世界中に広まったのは、1851年に開かれたロンドンで第一回万国博覧会です。ここで美しい陶磁器を愛するイギリスのビクトリア女王が、ディナーセットを注文したのです。このような経緯もあり、貴族や上流階級の名家を次々に顧客にしていきました。

ヘレンドの特徴 シノワズリ

 ヘレンドの大きな特徴に挙げられることは、花のモチーフと並び中国や日本などの東洋的趣味がとくに有名となっています。東西文化の融合を思わせるような、遊び心に優れたパターンが数多く表現されていて、当時の貴族たちは、東洋の花や蝶などがえがかれた器を好んでいました。東洋的な文様ではあるものの、はっきりとした手本はなく、このような中国風のモチーフを施す傾向のことをシノワズリと呼んでいます。一般的には中国趣味の装飾のことをさすケースがほとんどですが、この文様は様々な工芸品にも組み込まれています。創業から100年以上がたっても、最新技術は導入しているものの、ハンドペイントの特徴は現在でも貫いています。

ビクトリア模様

 モチーフになっているものの中でもっともよく知られている文様は、ビクトリア文様と呼ばれるものです。これは第1回ロンドン万国博覧会に出品された器のモチーフであり、これがビクトリア女王の目に留まったのです。このようなことからビクトリア文様という名前として知られています。このシリーズにより世界的なブランドとしての地位を確立したといえるでしょう。 ビクトリアと名付けられた装飾の中には、蝶や牡丹などのデザインとともに、鮮やかな色合いなどには清朝時代に数多く制作された中国磁器の影響がうかがえます。そのほかにも唐草文様や松竹梅なども頻繁に登場していますが、これらは本来であれば富貴や長寿、高潔や子孫繁栄など様々な意味を持っています。このような象徴的な図案をデフォルメし装飾にもちいることは、中国的な雰囲気を表現することが中心だったからです。

ヘレンドの職人養成学校

 自社で養成学校を持ち、この学校で職人たちは確かな技術力を身につけています。たとえ養成学校に通ったとしても、入社できるのはごくわずかな精鋭だけといわれていて、伝統の技や品質を保つための厳しい姿勢がうかがえます。

タイトルとURLをコピーしました