飛騨の秘境の焼き物 渋草焼の歴史と特徴

伝統工芸品・民芸品

磁器といえば有田焼や伊万里焼、九谷焼が衆目に知られていますが、渋草焼も磁器の一つです。観光地で有名な飛騨高山にその窯元がありますが、たった2つの窯元がその歴史を守っているのです。

渋草焼の歴史や特徴

渋草焼は岐阜県高山市で焼かれている陶磁器であり、天保11年に陶磁器を自給自足するために官民共同の窯場を作ったことが始まりだとされています。原材料には地元の渋草陶石が用いられていますが、瀬戸焼と九谷焼の特徴が取り入れられた焼き物です。瀬戸や九谷といった磁器産地から陶工や絵師を呼び寄せ、これらの特徴を織り交ぜながら作品を完成させたのでこういった焼き物の特徴が織り交ぜられています。渋草焼についての理解を深めたいと考えるのであれば、具体的な作り方を知ることから始めてみると良いでしょう。

今もなお作られ続ける渋草焼

その当時、きれいな渋草がたくさん自生していたのが名前の由来になっていますが、渋草焼の歴史が今でも陶器の絵柄に感じることができます。江戸幕府が終わったと同時に一度は渋草焼も途絶えてしまいましたが、しばらくして有志が集まり再起させることができました。その後しばらくして2つの窯元が異なる方向性を選ぶことになります。渋草焼の作家や窯元をもう少し詳しく見てみるとわかります。

芳国舎

一つは芳国舎で染付や磁器の食器を中心に焼いています。赤、緑、黄色の鮮やかな色が特徴で、一つ一つ職人さんが手書きで仕上げていくのです。職人気質を感じさせる器だと言えますし、根強いファンが多いです。

芳国舎の外観

〒506-0055
岐阜県高山市上岡本町8丁目487

電話番号:0577-34-0504 FAX番号:0577-34-0844

渋草柳造窯

もう一つは渋草柳造窯で陶器を焼く窯で、繊細で緻密な絵を見ることができます。数が少ないため、飛騨高山を訪れない限り見る機会がないように思えますが、年間250万人の人が訪れる観光地ですから、そのファンは徐々に広がっているといえます。

渋草焼の魅力

地元で取れる陶石を使っていることも特徴ですが、やはり代々受け継いできた技術と職人の気概があるので、今でも渋草焼は魅力を保つことができているのです。渋草柳造窯はすでに6代目になっており、5代は名工といわれていましたがそれぞれの作品を楽しむことができます。磁器から陶器に変えるのは大きな変化でしたが、それでも渋草焼のデザインを上手く取り入れています。このように地方には多くの人が知らない優れた磁器や陶器がまだまだあるのです。その歴史を知ることで特徴を理解することができますし、作家や窯元を訪れることができるならその良さをもっと実感することができます。よく見かけることですが、せっかく買った器を使わないで飾っている人が多いですが、本当にもったいないです。見た目が美しくて価値がある器を使うことで、いつも食べている食事や飲んでいるお茶などが何倍も美味しく感じることができるようになります。それで、日常使いの器として渋草焼を使ってみるのも生活を豊かにする方法であるといえます

渋草焼の作り方

素材の磁土を用意することができたら、作品の完成形を目指して成形を行います。ろくろ形成や石膏型を使った鋳込成形で形が作られることが多く、成形が完了したら削りの過程に移ることが可能です。仕上げ削りを行って表面を均一に滑らかにすることができたのであれば、乾燥させてから約800度で8時間素焼きを行います。素焼きが終わったものには下絵付けが行われますが、下絵付けには呉須が使われることがほとんどです。下絵付けした作品に釉薬をしっかりとかけた後は約1,300度で本焼きを行います。22時間ほど本焼きを行うことが多く、長時間かけてしっかりと焼成を行うことが重要なポイントです。温度や時間の調整に失敗すると、美しい作品に仕上げることができません。本焼きが終了すると上絵付けを行いますが、このときには上絵具が使用されます。上絵付けが終わると約800度で9時間ほど上絵焼成を行い、しっかりと冷やしたら作品の完成です。渋草焼は少し鉄分を含んだ陶石を使用しているので、完成したものはわずかに青みを帯びた白地だと感じられるでしょう。藍色や赤色、緑色や黄色などで絵付けが行われることが多く、そのコントラストが独特な風合いを味わうことができます。 渋草焼を作っている窯元は1つだけではありませんが、基本的にはこのような伝統的な方法で作られていることを知っておくと良いでしょう。どういったアイテムを作るか、何色を用いてどういった模様や絵を描くかということは窯元ごとに違いが感じられる部分です。手順だけを確認すると簡単に感じられるかもしれませんが、成形や削り、絵付けの丁寧さや乾燥の加減、焼成の際の温度調節などの全てが上手くいかなければ質の良い焼き物を完成させることができません。渋草焼は高度な技術によって作られている焼き物であることを理解しておくと良いかもしれません。

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