【有田焼】華乃ぐい呑揃（９色）

九つの小さな器は、それぞれが異なる個性と物語を持つ『華』であり、揃って初めて一つの絢爛で奥深い世界観を現代の暮らしに再現します。日常の喧騒から離れ、大切な人と分かち合うための特別な時間を演出し、一杯の酒や一煎の茶を、洗練された儀式へと昇華させます。

この珠玉のぐい呑を生み出したのは、有田の地で約半世紀にわたり『色彩の美境』を追い求めてきた真右エ門です。『窯変』とは炎の中で起こる奇跡的な色彩の変化を指し、気温や窯内の微妙な条件差が多様な表情を生みます。その一期一会の美こそが窯変ものの真骨頂であり、多くの蒐集家を魅了してやみません。写真は、真右エ門窯の代名詞であり、かつては宝石として珍重されたルビー色の【辰砂】
そして、重要文化財の茶碗に着想を得た【白天目】。

九色のぐい呑は、その日の気分やもてなす相手、合わせる酒や茶、季節に応じて最適な「美」を選ぶ楽しみを与えます。日本酒に限らず、玉露のような高級茶の茶杯、また、料理の味見碗としても理想的であり、用途を越えて多くの嗜好に応えます。
掌への収まり、僅かにくびれた口縁部の曲線。これらは味わいを引き出すために計算された「用の美」の結晶です。九州天草産の高級陶石を使用し、1300度で焼成された有田焼の磁器は軽やかで硬質。また、吸水性を伴わず、香りや味を損なわず繊細な風味を最大限に楽しめる一器です。

華乃ぐい呑揃は、単なる器のコレクションではなく、暮らしに特別な彩りを招き入れるよう作陶されています。真右エ門の心のこもったものづくりと炎から生まれた九つの芸術品は、日々の暮らしに洗練された「粋」の世界を添えてくれます。長く大切にお使いいただいても、有田焼の磁器は劣化することなく、器への愛着はより深まります。やがては、日本の美意識を後世に伝える小さな物語として、そっと次世代へと手渡されていくはずです。選び抜かれた九つの「華」を、生涯の宝ものとして人生にお招きいただければ、作者にとってこれに勝る本望はありません。