これでこけしマスター。こけしの由来と種類【東北11系統の特徴】
丸い頭に細い胴、素朴な笑顔。東北の温泉地で生まれた「こけし」は、江戸時代末期から続く日本の伝統工芸品です。 この記事では、こけしの由来と歴史、東北6県・11系統の見分け方、作り方、そして絵付け体験ができる施設まで、こけしのすべてをわかりやすくまとめました。読み終わるころには、温泉地の土産物店でこけしの産地を言い当てられるようになります。
- こけしの由来(「子消し説」は本当か)と歴史
- 三大発祥の地と、東北11系統それぞれの特徴
- こけしができるまでの工程
- こけしを買える・絵付け体験ができる施設

こけしの魅力とは?
津軽塗や南部鉄器、大館曲げわっぱ、赤べこなど、東北地方には魅力的な民芸品や伝統工芸品がたくさんあります。中でも東北の温泉地が産地になっているこけしは、その代表格です。
山形県・青森県・福島県・岩手県・秋田県にも、土地の伝統や歴史を映した個性的なこけしがありますが、国の伝統的工芸品に指定されているのは「宮城伝統こけし」だけです。
- 伝統的でありながら革新的:人気キャラクターとのコラボこけしもあり、老若男女に親しまれている
- 産地ごとに顔が違う:表情・デザイン・模様を見比べたり、集めたりする楽しみがある
- 癒しのフォルム:誰からも愛される可愛らしさで、見ているだけで幸せな気分になれる
- 旅の記念に最適:東北の温泉地のお土産の定番
こけしには作家性のある「創作こけし」や自由度の高い「新型こけし」もありますが、この記事では江戸時代末期から作られてきた「伝統こけし」を中心に紹介します。
「子消し説」は本当?こけしの歴史と由来
こけしの由来には諸説あります。一時期テレビ番組で「子消し説」が話題になりましたが、裏付ける文献はなく、民俗学的には根拠のない俗説とされています。有力なのは、子どもが遊ぶための縁起物「木で作った芥子(けし)人形」が語源という説です。
江戸時代の末ごろ、お椀やお盆などの木製生活用具を作る「木地師(きじし)」と呼ばれる職人が、本業の傍らに端材で子どものおもちゃを作ったのが始まりと言われています。やがて東北の温泉地で土産物として売られるようになりました。
当初は着物を着せたりおんぶしたりして遊ぶ子ども用の人形でしたが、大正時代からは大人が鑑賞・収集する工芸品として人気が広がります。現在、こけしを作る職人は「こけし工人(こうじん)」と呼ばれ、形や模様の違いから東北6県で11系統に分類されています。
三大こけし発祥の地
最も古いこけしの生産地として、次の3か所が「三大こけし発祥の地」と呼ばれています。
- 鳴子温泉(宮城県)
- 土湯温泉(福島県)
- 遠刈田温泉(宮城県)
東北11系統のこけしを一覧で比較
11系統の特徴を、産地・頭のつくり・胴の形・模様で比べると見分けやすくなります。
| 系統 | 県 | 主な産地 | 頭のつくり | 見分けるポイント |
|---|---|---|---|---|
| 鳴子系 | 宮城 | 鳴子温泉 | はめ込み式(首が鳴る) | 水引で結んだような前髪、肩と裾が広がった胴に菊花模様 |
| 遠刈田系 | 宮城 | 遠刈田温泉 | 差し込み式・大きい | 赤い放射状の「手柄」、切れ長の目、重ね菊 |
| 弥治郎系 | 宮城 | 白石市弥治郎 | 差し込み式・大きい | ベレー帽のような多色のろくろ模様、くびれた胴 |
| 作並系 | 宮城・山形 | 仙台市、作並温泉ほか | 差し込み式・小さい | 細い胴、裾を絞った形、カニ菊模様 |
| 肘折系 | 山形 | 肘折温泉 | 差し込み式 | にんまりした表情、肩の張った太い胴に草花模様 |
| 山形系 | 山形 | 山形市 | 差し込み式・小さい | 割鼻、紅花や牡丹の模様 |
| 蔵王系 | 山形 | 蔵王温泉 | 差し込み式・大きい | おかっぱ頭、どっしりした胴に桜くずし模様 |
| 土湯系 | 福島 | 土湯・飯坂・岳温泉 | はめ込み式(首が鳴る) | 頭に蛇の目模様、細い胴にろくろの横縞(ボーダー) |
| 津軽系 | 青森 | 温湯・大鰐温泉 | 作り付け(一本の木) | 胸のふくらんだ胴、牡丹・アイヌ・ねぶた模様 |
| 南部系 | 岩手 | 盛岡、花巻温泉 | ゆるいはめ込み式(頭が揺れる) | 彩色がなく素朴。おしゃぶり「キナキナ」が原型 |
| 木地山系 | 秋田 | 木地山 | 作り付け(一本の木) | らっきょう型の頭、縦縞の着物に梅の前垂れ模様 |
こけしの種類【宮城県】4系統

作並系【仙台市、作並温泉、山形市・米沢市・寒河江市・天童市(山形県)】
仙台市や作並温泉だけでなく、天童市・米沢市・山形市・寒河江市など山形県の地域も産地に含まれるため、山形作並系と呼ばれることもあります(山形を独立系として扱う場合もありますが、ここでは同じ系統として紹介します)。
遠刈田から伝わった技をもとに、山形系の影響を受けつつ独自に発展したと言われています。差し込み式の小さな頭と、かつて子どもが握って遊んだ名残といわれる細い胴が特徴です。胴の裾を絞った形と、カニ菊と呼ばれる紋様が代表的です。
鳴子系【鳴子温泉】
遠刈田・土湯とともに、伝統こけし三大発祥の地のひとつです。はめ込み式で、首を回すとキイキイと音が鳴り、水引で結んだような前髪が特徴です。胴は中ほどが細く、肩と裾が広がった形で、菊花などの華やかな模様が描かれています。
遠刈田系(とおがった)【遠刈田温泉】
鳴子・土湯とともに三大発祥の地のひとつです。差し込み式の頭は大きく、「手柄(てがら)」と呼ばれる赤い放射状の飾りやおかっぱ頭が描かれています。切れ長の細い目となで肩の細い胴、重ね菊や木目模様が特徴です。
弥治郎系【白石市弥治郎】
三大発祥の地の鳴子や遠刈田より少し新しいと言われています。差し込み式の頭は大きく、ベレー帽のような多色のろくろ模様が特徴です。胴にくびれのある女性的な形で、ろくろ模様の上に衿や裾がシンプルに描かれています。
こけしの種類【山形県】3系統

肘折系【肘折温泉】
鳴子と遠刈田の混合系統として発達したとされています。頭は差し込み式で、にんまりとした表情が特徴です。肩が張って段のある太めの直胴に、重ね菊や撫子など草花の模様が多く描かれます。
山形系【山形市】
作並で学んだ木地師が伝えたと言われ、作並系と同様に差し込み式の小さな頭と細い棒状の胴が特徴です。頭には赤い飾りと中心を貫く髪、顔には特徴的な割鼻が描かれ、胴には紅花・牡丹・菊・梅などの模様が主流です。
蔵王系【蔵王温泉】
遠刈田系の影響を受けて発展したと言われています。差し込み式の頭は大きく、赤い放射状の飾りやおかっぱ頭が多く、どっしりした胴体には桜くずし・重ね菊・牡丹などの模様が描かれています。
こけしの種類【福島県】土湯系
土湯系【土湯温泉、飯坂温泉、岳温泉】
伝統こけし三大発祥の地のひとつです。頭は小さなはめ込み式で、首を回すとキイキイと音が鳴ります。頭には黒の蛇の目模様と大ぶりな前髪、鬢(びん)には髪飾りが描かれ、顔は鯨目にたれ鼻、おちょぼ口。細い胴に、太さの違う線を組み合わせたろくろの横縞(ボーダー)模様が最大の特徴です。歌舞伎メイクの「たこ坊主」など、特徴のある形があることでも知られています。
こけしの種類【青森県】津軽系
津軽系【温湯温泉、大鰐温泉】
頭と胴を1本の木から作る「作り付け」の手法です。頭はおかっぱが多く、裾が広く胸のふくらんだ胴は温湯こけしならではの形。津軽藩の家紋である牡丹模様やアイヌ模様、ねぶたの力強い模様が描かれているのが特徴です。
こけしの種類【岩手県】南部系
南部系【盛岡、花巻温泉】
赤ちゃんのおしゃぶり「キナキナ」が原型になっているこけしで、頭部がゆるいはめ込み式のため頭がゆらゆらと揺れる珍しい作りです。彩色がないのが特徴で、重ね菊やヨダレ掛模様が描かれたものもありますが、素朴で簡素なものが多いです。
こけしの種類【秋田県】木地山系
木地山系【木地山】
頭と胴を1本の木から作る「作り付け」の手法で、頭はらっきょう型。赤い飾り布をつけた大きな前髪やおかっぱ頭が描かれ、全体的に華やかです。胴はどっしりと太く、縦縞の着物に梅の花の前垂れ模様を描いたものが代表的です。
こけしの作り方:11の工程
こけしは、木を切り出してから仕上げまで、すべて手作業で作られます。
- 原木伐採:ミズキ、イタヤカエデ、ビヤベラ、エンジュなどが使われます
- 運搬
- 乾燥
- 玉切り
- 木取り
- 荒挽き
- かんな掛け(仕上げ挽き)
- 仕上げ磨き
- 漂白
- 描彩:系統ごとの顔や模様を描く
- 仕上げ
こけしを買える・絵付け体験ができる施設

こけしの菅原屋(宮城県・鳴子温泉)
一からこけし作りを体験できるこけし専門店。ろくろを回しながらかんな棒をあてて削り、磨き上げる工程は集中力のいる作業で、出来上がったときの喜びはひとしおです。自分だけのオリジナルこけしを作ってみてはいかがでしょうか。
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白石市弥治郎こけし村(宮城県・白石市)
弥治郎の生活と民俗、森から木を取りこけしになるまでの経緯と歴史を一堂に展示。絵付けの体験コーナーがあり、工人の工房見学もできます。
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こけしの岡仁(宮城県・鳴子温泉)
鳴子伝統こけしの職人が丁寧に教えてくれる絵付け体験。伝統こけしを再現するのも、似顔絵を描くのも自由です。描いたこけしを贈り合えるので、カップルや家族の思い出づくりにもおすすめです。
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日本こけし館(宮城県・鳴子温泉)
宮城県大崎市鳴子温泉にある、こけしの専門施設。各系統のこけしの展示を鑑賞できるほか、絵付け体験もできます。
日本こけし館の公式サイト
東北の温泉地には、系統ごとに個性の違う伝統こけしがそろっています。お土産の定番はもちろん、自分で絵付けをした世界にひとつのこけしは、旅のいちばんの思い出になります。
日本の伝統工芸をもっと知る
こけしのように、日本各地には土地の歴史を映した工芸品があります。伝統工芸品と民芸品の違いや、贈り物に選ばれている工芸品については、こちらの記事もご覧ください。
よくある質問
こけしの「子消し説」は本当ですか?
いいえ。裏付ける文献はなく、民俗学的には根拠のない俗説とされています。有力な説は、子どものおもちゃ「木で作った芥子人形」が由来というものです。
こけしは何系統ありますか?
形や模様の違いから、東北6県で11系統(鳴子・遠刈田・弥治郎・作並・肘折・山形・蔵王・土湯・津軽・南部・木地山)に分けられています。
国の伝統的工芸品に指定されているこけしは?
宮城県の作並・鳴子・遠刈田・弥治郎の4系統と山形県の肘折系を合わせた「宮城伝統こけし」だけです。
- こけしは江戸時代末期、東北の温泉地で木地師が子どものおもちゃとして作ったのが始まり。「子消し説」は俗説
- 三大発祥の地は鳴子・土湯・遠刈田。東北6県で11系統に分かれる
- 見分けるポイントは頭のつくり(はめ込み・差し込み・作り付け)、胴の形、模様
- 鳴子温泉や弥治郎こけし村では、絵付け体験で世界にひとつのこけしが作れる







































