南部鉄器の急須やフライパンが話題。その特徴と歴史、その魅力とは?
「南部鉄器」には2つの種類がある?
日本全国には数多くの伝統工芸品が存在します。当時の製法を残したまま製造しているので一度にたくさん造ることはできませんが、一つ一つ丁寧に造っているので職人の魂を感じられます。そんな伝統工芸品の中でも独特の存在感を持っているのが、岩手が誇る工芸品「南部鉄器」です。南部鉄器には大きく分けて2つの種類が存在します。奥州市水沢の南部鉄器(別名水沢鋳物)と盛岡の南部鉄器です。
2種類の南部鉄器のそれぞれの由来
- 奥州市水沢の南部鉄器は岩手県の南側にあるから
- 盛岡の南部鉄器は南部藩由来の南部鉄器であるから
と言われています。
南部鉄器の歴史
水沢の南部鉄器は平安時代後期に、江刺郡(現在の岩手県奥州市)の豊田館にいた藤原清衡が当時の近江国(現在の滋賀県)より鋳物師を招き、その後南下して現在の奥州市水沢に伝わった言われています。
奥州市水沢は、北上山地の砂鉄、木炭および北上川旧河川跡から出る質の良い砂と粘土などの鋳型材料が容易に手に入れられることから鋳物業が栄えました。当時、鋳物師たちは「歩き筋」と呼ばれ、中世の頃は一つの地域で商売を終えるとまた次の土地へ渡り歩いており、清衡が平泉に移ると彼らも一緒に移りました。実際、奥州藤原氏の時代の遺跡からは鋳型が出土しており、中尊寺を始めとする寺院などの備品も鋳造していたようです。
盛岡の南部鉄器は、安土桃山時代と江戸時代を跨ぐ慶長年間(1596年-1615年)に盛岡藩主南部氏が盛岡城を築城した頃に始まったといわれています。江戸幕府が成立し平和な時代が到来し茶道に造詣の深かった南部藩2代目藩主:南部重直が、自藩から良質の鉄等の原材料が採れることから茶の湯釜の制作を思い立ち、藩内の鋳物師とは別に万治2年(1659年)に京都出身の釜師を新たに召抱え、茶の湯釜を作らせたのが南部釜の起源と言われています。その後、昭和に入ると水沢の南部鉄器と盛岡の南部鉄器を総称し、南部鉄器と呼ぶようになりました。
南部鉄器の特徴
南部鉄器の特徴の一つは鉄分を豊富に含んでいる点です。黒をメインにして造っているものは鉄そのもののような雰囲気があるので、無機質な雰囲気や無骨な雰囲気が好みの方には人気です。もう一つの特徴は、とにかく長く使える点です。丈夫なものなので定期的に手入れをすれば半永久的に使うことも可能です。
南部鉄器でできた急須や鉄瓶が人気商品であり、錆が発生しにくいで毎日使うものとしては最適です。最近は黒だけではなく、色彩豊かなものも人気です。変わったところだと南部鉄器のアマビエなども存在します。
南部鉄器のお手入れ
手入れをすれば半永久的に使用できるものですが、長く使うためのコツというものがあります。洗うときは洗剤をたっぷり使う必要はなく、ゴシゴシ擦る必要もありません。汚れが目立たなければ軽く水ですすぐだけでもOKです。他の製品でも共通して言えることですが、空焚きは絶対にしないように注意しなければいけません。多少焦げても使えるものではないので要注意です。中に水を入れたままにせず、しっかりと乾燥させて保管するのがとても大事です。水分が残っていると錆の原因になり劣化につながります。
南部鉄器種類別お手入れ方法(急須・鉄瓶・鉄鍋フライパン)
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急須
最初は全体をぬるま湯でよく洗い流してから使い始めます。使用後のお手入れ洗うときもぬるま湯で洗い、水分をよくふき取ります。急須の場合、注ぎ口や蓋などに水分が残りやすいので注意が必要です。※直接火にかけて使用しないでください。 -
南部鉄瓶
最初は、水を8分目まで入れ、1/3程度に減るまで沸騰させてください。内側に鉄と化合したタンニン鉄という膜ができます。外側がさびてしまった時は、乾いた布に湿ったお茶葉を含ませ磨きます。※空焚きに注意 -
南部鉄鍋・フライパン
最初は、お湯でよく洗い、火にかけ水分を飛ばします。その後油を塗ってから中火で熱して、油をよく表面に馴染ませます。使用後は、お湯か水で洗い火にかけ水分を蒸発させます。しばらく使わないときは、油を塗って保管してください。少し熱いうちに洗うと汚れがよく落ちます。
南部鉄器(鉄瓶)の作り方
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デザインの作成
どのような形の鉄瓶を作るかデザインを決め図面を描き、その図面をもとに木型を作ります。 -
鋳型作り
木型を上下左右にぶれないようにして回転させ型枠に鋳物土を荒土、中土、肌土と砂の粗さ順にぬりつけて作ります。 -
紋様押し・肌打ち
型挽きで挽き上げた鋳型が完全に乾く前に、霰(あられ)や動物、植物などの紋様をへらや霰押し棒を使って押していきます。次に、肌打ちをして仕上げます。
※肌打ちとは埴汁(川砂に少量の粘土を水で溶いたもの)を混ぜたものを団子状に丸め、鋳型に軽く押していく作業です。布を丸めたタンポや筆を使って砂を置いていく方法もあります。 -
型焼
紋様押し・肌打ちが終わった鋳型を、乾いた後、約1300度の炭火で焼き固めます。鋳型の形状、大きさによって焼く時間、炭火の調整など微妙に異なります。 -
中子作り
中子とは、鋳型の制作で使用した木型よりも小さく制作した中子用の木型で挽き上げた型から、川砂と粘土を混ぜ合わせた土をつめ型をとったものです。この中子により鉄器の厚みができます。乾いた後にクルミ(炭の粉)を塗ります。 -
吹き(鋳込)
鋳物を作る工程の中では「一番華のある作業」といわれます。コークス(石炭を蒸し焼きにすることにより作られる燃料)と鋳鉄を交互に入れて、溶解炉で約1300~1400度まで温度を上げ、鉄を溶かしとりべ(ひしゃくのようなもの)にくみ取り、鋳型に流し込みます。 -
仕上げ
釜焼きを終えた鉄瓶の表面をきれいにし、ヤスリや砥石等で注ぎ口や鋳ばりを細部に渡り手入れをした後、約300度に熱し漆を焼き付け、その後「おはぐろ」や「茶汁」を塗ります。その後、専用のはけで水はきをして、表面に微妙な光沢をだす処理をして、最後に鉉(取っ手部分)を取り付け完成となります。
南部鉄器についてもっと知る
岩鋳鐵器館
住所:〒020-0863 岩手県盛岡市南仙北2丁目23-9
公式サイト:https://iwachu.co.jp/
南部鉄器を買える通販サイト
奥州南部鉄器
水沢鋳物工業協同組合は、南部鉄器のふるさと、岩手県奥州市を中心に活躍している伝統工芸士から新進気鋭の作家まで多数所属している組合です。2020年6月よりオンラインショップにて組合員作家と製造工場の作品の販売を始めました。
https://oshunambu.theshop.jp/
OIGEN
IHに対応した鉄鍋やフライパン、鉄瓶、キャンプ用などデザインと機能性を備えた様々な南部鉄器を取り揃える鋳造所の通販サイト
古く900年前の平泉時代より受け継がれている鉄鋳物技術の一端を担いつつ、及源鋳造は及川源十郎鋳造所として創業。
https://oigen.jp/
IWACHU
県内では唯一となる、デザインから販売までの一貫生産体制をととのえ年間100万点にもおよぶ製品を、国内はもとより海外へもお届けしています。丈夫であること、そして使うたびに愛着が深まっていく道具であること。確かな品質に支えられた「本物」だけが持つ南部鉄器の魅力を製品を通してみなさまへお伝えしていきたいと考えています。
http://www.iwachu.info/
使えば使うほど味の出て愛着の湧く南部鉄器。あなたもこの機会に岩手県の伝統工芸品南部鉄器を育てて見ませんか?