日本の陶磁器コンツェルン 大倉陶園ってどんなメーカー?
大倉陶園は横浜市に本社のある陶磁器メーカーで、世界最大のセラミック産業を構成するグループの一員でもあります。1919年に大倉父子により創立され、日常生活で使用するものより美術的価値のある高級食器作りを得意としています。創業者のさらによいものを目指すという理念を忠実に守り、その実現のために上質の原料と伝統の技法を用いて質の高い陶磁器を作り続けており、白磁の色味や磁器質の硬さなどが特徴です。古い顧客には歴史に名を残すような著名な人物も存在しており、日本を代表する陶磁器メーカーのひとつです。
欧州の名窯に対抗
創業以前は高級陶磁器といえばヨーロッパのブランド品が中心でしたが、歴史的な流れから洋装が上流階級の正装となり晩餐会に洋食器が使用されるようになると状況は変化します。海外にオーダーするには時間と外貨が必要なことから国内生産が求められるようになり、そこに注目したのが創業者である大倉氏です。国内で製造することでデザインや色合いが自由に決められる、外国製品には真似のできないサービスを提供できるといった利点から高級陶器作りに着手します。当時、国内の製造業を興隆させ日本の近代化を推し進めようとしていた知人の支援があったことも背景のひとつです。
現代の大倉陶園
現在、大倉陶園の商品にはマグカップや湯のみ、カップとソーサー、プレートやインテリア、アクセサリーまでさまざまな商品がそろっています。直販店はもちろんオンラインでも注文でき自然界にはない美しい青バラを咲かせたカップや白磁に金縁が煌めく湯のみ、五節句をモチーフにした和の趣のあるデザイン画のプレートなど多彩です。価格帯も幅広いのでお世話になった人への贈り物や内祝い、記念品まで予算やシチュエーションで選ぶことができます。
伝統的な技法
大倉陶園を語るときに欠かせないのが伝統の技法です。さらによいものを作るという理念によって生み出された製品は、長く受け継がれてきた技法によって支えられています。大倉陶園を象徴するといえる白磁は白すぎず暗すぎない繊細な色合いが特徴ですが、原料にこだわり最高級カオリンを贅沢に使用し世界に類を見ない高温で本焼きをすることで生み出されます。デザイン画も日本画の素描き技法で手描きすることで多様な色調を表現しており、絵師が描き出す緻密で繊細な花々からは香りが漂ってきそうです。プレートの縁取りや白磁のカップに施される金色の模様はエンボス技法によるものです。型抜き直後の柔らかい成形生地に模様を刻み込み、その部分には釉を施さず本焼きすることで得られる輝きです。繊細で複雑さのある技法で現在では大倉陶園だけが保持する世界でも希少な技法です。漆蒔技法は新たに生み出された技法のひとつです。この上なき美術品を作るという創業者の意志を実現させるために開発された独自の技法で、漆の上に絵具の粉を蒔きそっと擦ることで独特の色味や艶を出します。この技法により色付けされたカップは内側の白磁と外側の色彩の対比がとても鮮やかです。