食器に鉛が入っているって本当?危険性・見分け方・安全な食器の選び方と日本の規制
「食器に鉛が入っている」と聞くと驚く方も多いのではないでしょうか。実は、陶磁器の絵付けや釉薬(うわぐすり)には、かつて鉛が当たり前のように使われていました。今も、古い食器や一部の輸入食器からは基準を超える鉛が溶け出すことがあります。この記事では、食器に鉛が使われてきた理由、体への影響と溶け出しやすい条件、鉛入り食器の見分け方、日本の食品衛生法の規制値、そして安心して使える食器の選び方を、公的機関の資料をもとに、有田焼専門店JTOPIAがわかりやすく解説します。
- 食器に鉛が使われてきた理由(上絵具・釉薬の話)
- 鉛が体に与える影響と、鉛が溶け出しやすい条件
- 鉛入り食器の見分け方(古い食器・輸入土鍋・アンティーク)
- 日本の食品衛生法の規制値と、輸入食器の検査
- 安心して使える食器の選び方(5つのチェックポイント)
鉛はなぜ食器に使われてきたのか

鉛は、電池などの工業製品にも広く使われている金属です。陶磁器の世界では、絵付けに使う上絵具(うわえのぐ)の母材となるガラスの主成分として、また釉薬を低い温度で溶かすための成分として、酸化鉛が古くから使われてきました。
- 発色が良くなる:絵具に透明感が出て、赤や黄、緑が鮮やかに映える
- 低い温度で溶ける:800度前後の低温で焼き付けられるため、色が飛びにくく、燃料も少なくて済む
- 筆の運びがなめらか:絵付け職人にとって扱いやすい
こうした利点から、国内外を問わず「最適な材料」として長く使われてきました。一方で鉛は代表的な重金属であり、体内に一定以上取り込まれると健康に悪影響を及ぼします。
鉛が体に与える影響
鉛は食物や水にもごく微量含まれており、私たちは日常的に少しずつ摂取しています。食品安全委員会の評価(2021年)では、悪影響が出ない血中鉛濃度をはっきり定めることは難しく、できるだけ摂取量を減らす努力が必要とされています。鉛に汚染された食品や、鉛を含む塗料片などを口にした場合は、排泄が追いつかず体内に蓄積され、健康に悪影響を及ぼします。
- 貧血、腹痛、筋肉の衰弱
- 脳や神経、腎臓の機能障害
- 子どもの認知・知能発達への影響。妊娠中の方や小さなお子さんは特に影響を受けやすいとされています
鉛が溶け出しやすい条件
食器に含まれる鉛は、ただ盛りつけるだけで大量に溶け出すわけではありません。溶け出しやすいのは、次のような条件が重なったときです。
- 酸性の食品:酢の物、柑橘類、トマトソース、梅干し、ワインなど
- 加熱:土鍋での煮込み、電子レンジでの加熱
- 長時間の保存:漬物や果物を器に入れたまま何日も置く
- 釉薬のひび割れや剥がれ:傷んだ表面から成分が出やすくなる
輸入土鍋から鉛が検出された事例
2007年5月、北海道で中国製の土鍋を加熱調理中に、蓋と鍋の間から銀色の液体が流れ出るという相談があり、検査の結果鉛が検出されました。輸入業者は販売済みの約9,000個を自主回収しています。陶器を焼き上げる際の釉薬に含まれていた鉛が、加熱によって溶け出したと考えられています。ホームセンターなどで安価に売られている土鍋には海外製も多いため、産地や表示を確認することが大切です。
鉛入り食器の見分け方
見た目だけで鉛の有無を完全に判定することはできませんが、「疑ったほうがよい食器」は見分けられます。
| 注意したい食器 | 理由 | おすすめの扱い |
|---|---|---|
| 2009年の基準強化前に作られた古い食器 | 現在より緩い基準で作られている可能性がある | 飾って楽しむ。酸性の食品や加熱には使わない |
| 海外のアンティーク・お土産の食器 | 製造国の基準が不明。鮮やかな色絵や金彩は鉛を含むことが多い | 観賞用に。飲食には使わない |
| 産地や製造元の表示がない激安品 | 製造元に確認するすべがない | 購入を避けるか、加熱・酸性食品には使わない |
| 釉薬がひび割れた・剥がれた食器 | 傷んだ表面から成分が溶け出しやすい | 使用をやめる |
| 表示のない輸入土鍋・耐熱容器 | 加熱で溶出量が増える | 「食品衛生法適合」「直火対応」の表示があるものに替える |
- 産地名・窯元名(裏印)がはっきりしている、現代の国内の窯元が作った飲食用の器
- 「無鉛絵具使用」「食品衛生法適合」と製造元が明記している
どうしても確かめたい場合は、市販の鉛検査キット(綿棒で表面をこすって色の変化を見るもの)で簡易チェックできます。ただし結果はあくまで目安で、陰性でも安全を保証するものではありません。
九谷焼もかつては鉛と向き合っていた

華やかな色絵で知られる九谷焼も、例外ではありませんでした。九谷焼に限らず、陶磁器の加飾に使われる上絵具には酸化鉛が含まれていたため、鮮やかな発色の裏側には鉛の問題があったのです。
転機になったのは食品衛生法の規格強化です。食器の鉛溶出基準が厳しくなり、飲食器には従来の有鉛絵具が使いにくくなりました。そこで各産地の窯元や研究機関は無鉛絵具の開発に取り組みます。ある窯元では、家族だけで営む小さな窯で、当主がひとりで試作と失敗を繰り返して無鉛絵具を完成させたそうです。こうした努力によって、日常使いの食器にも安心して和絵具を使えるようになりました。
関連記事:九谷焼の歴史と特徴
日本の法規制:食品衛生法で鉛の溶出は厳しく制限されている
日本では食品衛生法の「食品、添加物等の規格基準」により、陶磁器やガラス製の飲食器から溶け出す鉛とカドミウムの量に規格が定められています。2008年の改正(2009年施行)で、この基準は国際規格(ISO)に合わせてさらに厳しくなりました。試験は、4%の酢酸を器に満たして室温で24時間置き、溶け出した量を測る方法で行われます。なお、この分野の行政は2024年4月に厚生労働省から消費者庁に移管されています。
| 食器の種類 | 鉛の規格 | カドミウムの規格 |
|---|---|---|
| 深さ2.5cm未満の皿など | 8 µg/cm²以下 | 0.7 µg/cm²以下 |
| 深さ2.5cm以上・容量1.1L未満(茶碗・湯呑みなど) | 2.0 µg/mL以下 | 0.5 µg/mL以下 |
| 容量1.1L以上3L未満 | 1.0 µg/mL以下 | 0.25 µg/mL以下 |
| 容量3L以上 | 0.5 µg/mL以下 | 0.25 µg/mL以下 |
| 加熱調理用器具(土鍋など) | 0.5 µg/mL以下 | 0.05 µg/mL以下 |
出典:消費者庁「器具・容器包装、おもちゃ、洗浄剤」/食品、添加物等の規格基準 第3 器具及び容器包装(PDF)
- 国内で製造・販売される飲食器は、この溶出規格を満たす必要があります。規格に適合しない食器を販売することは法律で禁止されています
- 輸入食器は、輸入時に検疫所への届出が必要で、検疫所がモニタリング検査(抜き取り検査)を行っています。全品を検査しているわけではありません
- そのため、製造元が不明な食器、古い食器、オークション品、極端に安い商品は、規格を満たしているか確かめる手段がなく、注意が必要です
安心して使える食器の選び方:5つのチェックポイント
- 産地と製造元がはっきりしている:産地名や窯元名が明記された食器を選びましょう。裏印(窯印)も手がかりになります
- 「無鉛絵具」「食品衛生法適合」の表示:無鉛絵具・無鉛釉薬を使っていることを製造元が明示している食器は安心です
- 用途に合った表示を確認する:土鍋や耐熱食器は「直火対応」「電子レンジ対応」など、用途が明記されたものを選びます
- 古い食器・骨董品は飾って楽しむ:基準強化前に作られた古い食器や海外の骨董品は、鑑賞用と割り切るのが安心です
- ひび割れや釉薬の剥がれがある食器は使わない:傷んだ表面からは成分が溶け出しやすくなります
関連記事:陶器と磁器の違いとは?原料・焼成温度・見分け方をわかりやすく解説/セラミックとは?陶器・磁器との違い
JTOPIAの器について
JTOPIAが扱う有田焼の飲食用の器は、いずれも現代の窯元が製造した、食品衛生法の規格に適合した製品です。骨董品やアンティークの飲食器は扱っていません。飾り絵皿や陶額などの美術品は観賞用としてお楽しみください。有田焼は1,300度前後の高温で焼き締める磁器で、表面が緻密なため汚れやにおいがつきにくく、長く清潔にお使いいただけます。
- 毎日使う器に:マグカップ 銀河/湯呑 銀河
- ご夫婦・ご両親への贈り物に:夫婦湯呑 銀河(累計販売数No.1)/夫婦湯呑 月うさぎ
- 毎日のご飯茶碗に:夫婦茶碗 鶯玉
- すべての商品を見る:有田焼の商品一覧
関連記事:有田焼に使われる天草産陶石ってどんな石?/日本三大陶磁器とは?美濃焼・瀬戸焼・有田焼の違いと見分け方
よくある質問
今売られている日本製の食器に鉛は入っていますか?
国内で製造・販売される飲食器は、食品衛生法の鉛・カドミウム溶出規格を満たす必要があり、規格に適合しない食器の販売は禁止されています。絵具や釉薬に鉛を含む製品であっても、規格の範囲内であれば飲食用として流通しています。
絵付けのある食器は危険ですか?
現在の国産食器の絵付けは、溶出規格に適合したものが流通しています。産地や窯元がはっきりした現代の食器であれば、絵付けがあっても過度に心配する必要はありません。
古い食器や海外のお土産の食器は使えますか?
製造時期や産地の基準が分からない食器は、飲食用ではなく飾って楽しむのが安心です。特にひび割れや釉薬の剥がれがあるものは使用を避けてください。
鉛入りの食器を電子レンジで使うとどうなりますか?
加熱により鉛が溶け出しやすくなります。また金彩・銀彩のある食器は火花が出るため、電子レンジには使えません。表示のない古い食器は電子レンジを避けてください。
土鍋の鉛はどう確認すればいいですか?
「食品衛生法適合」「直火対応」の表示と、製造元・産地の記載を確認してください。表示のない輸入土鍋は、加熱調理用の厳しい規格(鉛0.5 µg/mL以下)を満たしているか分かりません。
- 陶磁器の絵具や釉薬には、発色を良くするために鉛が長く使われてきた。問題は主に上絵具・釉薬にあり、素地の種類では判断できない
- 鉛は体内に蓄積すると健康に悪影響。酸性の食品・加熱・長時間保存で溶け出しやすい
- 見分け方:基準強化前の古い食器、海外のアンティーク、表示のない激安品、ひび割れた食器は飲食に使わない
- 日本では食品衛生法で溶出量が厳しく規制されている。輸入品は届出と抜き取り検査
- 産地・製造元がはっきりした現代の窯元の器を選ぶ































